つい食べ過ぎてしまう原因は、腸内細菌の影響か(研究結果)

腸は「第二の脳」と呼ばれることがある。実際に、腸と脳は密接にやりとりをしていることが、近年明らかになってきている。特に、感情のコントロールや精神の安定に関わる物質である「セロトニン」の9割は、腸で作られていると言われている。

2018年8月に学術誌『PLOS ONE』に掲載された論文によれば、人の腸内に生息する腸内細菌が作る成分は、食べる量の調節や肥満に影響する可能性が出てきたという。

腸内の物質「インドール」が脳に影響する

私たちが何かを食べ始めたり、食べるのをやめたりする行動(摂食行動)に関係する脳の部位として、「扁桃体」「側坐核」「島皮質前部」の3箇所がある。これらの領域は相互にネットワークを作り、食べることを「快楽だ」と評価することに関わっている。

アメリカの研究者らは、これらの脳のネットワークに対する、腸内物質の影響を調べた。

63人の実験参加者から糞便を集め、その中に含まれる「インドール」「インドール酢酸」「スカトール」という物質の量を調べた。これらの物質は、腸内細菌によって作り出されることが知られている。また、脳の状態を測定できる装置であるfMRIを使って、脳の状態を調べた。さらに、参加者の体格指数(BMI)や、食物依存症スコア(YFAS)、不安抑うつ尺度(HAD)についても調査した。

その結果、インドールは、BMIおよび側坐核の機能的接続性と、インドール酢酸は、扁桃体の機能的接続性と、スカトールは、YFASスコア、側坐核の機能的接続性、扁桃体の解剖学的接続性とそれぞれ正の相関があることがわかった。また、YFASとHADも、側坐核の機能的接続性と相関があることがわかった。

つまり、腸内細菌が関与するインドール類は、脳のネットワークの一部と相関があるらしいことがわかったのだ。

(青色の部分が島皮質前部、赤色の部分が側坐核、緑色の部分が扁桃体である。画像は元論文 Correlation of tryptophan metabolites with connectivity of extended central reward network in healthy subjects より)。

インドールでつながる腸と脳:2つの仮説

この研究結果は、インドールと脳のはたらきに相関があることを示した。それでは、インドール類はどのようなメカニズムで、摂食行動に関する脳に影響しているのだろうか。そのメカニズムにまつわる仮説を2つ挙げる。

インドール類はまず、腸のL細胞にある「GLP-1」というホルモンの分泌をコントロールすることが知られている。GLP-1は腸と脳を結ぶ迷走神経に作用して、脳に影響を与え、摂食行動に影響していると考えられている。

仮説1:インドール類→GLP-1をコントロール→GLP1が迷走神経に作用→脳に影響

また、腸内細菌の体内で作られる成分が、セロトニンの合成や放出をコントロールしていることが知られている。腸内のセロトニンもまた、迷走神経にはたらくことが知られている。インドール類は、腸内細菌の細胞内シグナルになるため、腸内細菌で作られる成分に影響する。つまり、インドール類は、セロトニンの量に間接的に影響を与えることで、脳への情報伝達をコントロールしていると思われる。

仮説2:インドール類→腸内細菌のセロトニン合成に関与→セロトニンが迷走神経に作用→脳に影響

この研究は少人数で行われたものであるため、詳しいことを知るには追加研究が必要だ。しかし、腸内細菌が作る物質が、腸と脳の間の情報伝達に影響し、摂食行動をコントロールしている可能性があることは大変興味深い。

執筆:大嶋絵理奈

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元論文:Correlation of tryptophan metabolites with connectivity of extended central reward network in healthy subjects

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