脳を騙して満腹にする「錯覚満腹感」のテクニック

人の満腹感は、生理学的には「胃のふくらみ」と「血糖値の上昇」のふたつの要素で決まると言われている。しかし、気温や照明、誰と一緒に食べるか、どんな食器で食べるかなど、満腹感は生理学的な要素以外によっても変化する。

中でも、五感やその人の認識の仕方によって変わる満腹感のことを、筆者は「錯覚満腹感」と呼んでいる。「錯覚満腹感」はどのように生み出せるのかを紹介する。

※この記事は、ベースフード株式会社が運営するBASE FOOD MAGAZINEへ寄稿した記事「脳を騙してダイエット。食べ過ぎを防ぐ「錯覚満腹感」とは?」を、加筆・修正したものです。

「視覚」で量の認識を変える

人はたくさん食べるとお腹いっぱいになるが、満腹感は、物理的な量の多さだけが理由ではない。「たくさん食べた」という思い込みもまた、満腹感を生み出すことに関係しているのだ。

思い込みで満腹感を生み出すシンプルな方法は「量を多く見せる」というものである。量を多く見せるテクニックとしては「料理を小さなお皿に盛る」という方法が有名だ。小さなお皿に盛ることで、皿の上での食べ物が占める面積の割合が増えるので、量が多く感じられるのだ。

これは、「デルブーフ錯視」に基づくテクニックで、「プレート効果」とも呼ばれている。デルブーフ錯視とは次のような錯視である。以下の図では、右側の黒丸のほうが、左側の黒丸よりも大きく見えないだろうか。

プレート効果を応用した盛り付けは、すでにレストランなどでも取り入れられている手法である。ただし、脳の空間認識能力などの違いによって、プレート効果を受けにくい人がいるのも確かだ。ある論文では「過体重の人はプレート効果を受けにくい」という実験結果が報告されている。

「情報」で量への思い込みを変える

見た目で量を錯覚させるということは、視覚刺激をインプットに、錯覚というアウトプットを生み出すことである。つまり、錯覚というアウトプットさえ起こせれば、インプットは視覚刺激でなくても良いのだ。

見た目の代わりのインプット。それは「情報」である。情報は、自分自身を騙す時には使えないが、食事を提供する側になる時に有効だ。

イギリスの研究者らによる実験では、食後2〜3時間後に感じる空腹感は、実際に食べた量よりも、「食べたと思いこんでいる量」によって左右されることが示されている。同じ量のスープを飲んだとしても、スープを500mL飲んだと思い込んでいる人は、300mL飲んだと思いこんでいる人よりも、2〜3時間後に空腹感を感じにくいことが分かったのだ。

このため、いつも200gのパスタを食べる人に対し、150gで提供しつつも「これで200gだよ」と伝えたり、内側に線の模様がついたお茶碗で白米を提供し「この線が一人前の目安なんだって」と言いながらいつもより少なく盛るなど、量を勘違いさせることで、少ない量でも満腹感を持続させやすいと言えるだろう。

「テクスチャー」や「質感」を用いた錯覚

視覚以外では、食べ物のテクスチャー(食感)もまた、錯覚満腹感に影響する。オランダの研究者らが実施した実験によれば、「厚みがあるもの」や「とろみがあるもの」は、満腹になった気になりやすい傾向があるという。

このため、トンカツやステーキは、長細いよりは分厚く噛みごたえがあるような形状で作ったり、煮込み料理は、とろみが出るまでじっくり煮込んだりすると、より満腹を感じやすくなると言えるだろう。

また、食べるときの食器も大切で、軽いスプーンよりは重いスプーンで食べるほうが、食べ物自体に重量があるような印象を感じさせ、満腹感につながりやすいことも知られている。

手料理を作る時には、こうしたテクスチャーや食器類の質感も意識することで、錯覚満腹感を生み出しやすい。

「イメージ」で食べたい量を減らす?

何かを食べる時には、食べ始めがもっともおいしく感じ、食べ進めるにつれて味に慣れていくような感覚を味わったことはないだろうか。食べ進めるにつれて味に慣れていくのは、体が満腹になるにつれて出てくるホルモンなどの影響もある。しかし、おいしさへの刺激に脳が慣れてしまうことも理由の一つだと考えられている。

食事の時には、食べ始めが脳にとってもっとも刺激が強く、食べ進めるにつれて刺激が弱まっていき、最終的に食べるのをやめる。このように、食べ進めるにつれておいしさの刺激に慣れてしまうことで満腹感がでてくる現象は「感覚特異的満腹感」と呼ばれている。

この感覚特異的満腹感のしくみを利用して錯覚満腹感を得る方法として、「食べる前に、あらかじめ食べるイメージを反復して、食べる前の刺激自体を弱めておき、食べる量を減らす」というものがある。

「料理を作っているだけでお腹いっぱいになってくる」という話を耳にしたことはないだろうか。これは、おそらく感覚特異的満腹感で説明ができる。

刺激が強いか弱いかは無意識レベルのものなので、必ずしも実感できるとは限らない。しかし、焼き肉の食べ放題に行く前に、あらかじめ肉汁滴るジューシーな肉を食べるイメージを反復したり、飲み会に行く前に、乾いた喉にビールをがぶ飲みするイメージを反復したりしておくことで、満腹になるまでの摂取量を、いつもより減らせるかもしれない。


これらのテクニックは、劇的な効果をもたらすものではないかもしれない。しかし、脳の機能をうまく活用する方法は、さりげないものであり、食事制限などの苦しい我慢などを要さないので持続性がある。つい食べ過ぎてしまうことに悩んでいる人は、錯覚満腹感の知識を頭の片隅に入れて食事を摂ってみてはいかがだろうか。

執筆:大嶋絵理奈

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