メニューのカロリー表示の位置は「左側」が効果的(研究結果)

消費者のカロリーの摂りすぎを防ぐ方法として、メニューにカロリーを明記する方法がある。飲み物として気軽に頼んでいるスタバの「フラペチーノ」も、実は軽食一食分のカロリーがあるとあらかじめ分かっていれば、オーダーを控えたりサイズを小さくしたりする人もいるだろう。

しかし、実はカロリー表示の位置によって、商品選択への影響は変化するのである。

2018年6月に学術誌『Journal of Consumer Psychology』に公開された研究によれば、左から右に読み進める言語圏では、レストランのメニューにおけるカロリー表示の位置を左側にすることで、消費者が低カロリーの商品を選ぶ傾向が高まるという。

カロリーは商品名の前に表示しないと意味がない?

2018年5月、アメリカ国内に20ヶ所以上の店舗を持つチェーンレストランには、メニューにカロリー表示をすることが義務付けられた。これには、お客さんが低カロリーの料理を選択しやすくする狙いがある。ただ、メニューのカロリー表示が、実際に低カロリーの料理の選択につながることを示すエビデンスはなく、カロリー表示の義務化は効果がない施策だと批判を受けることもあった。

しかし、アメリカ・ニューヨーク大学の研究者らは、カロリー表示の多くがメニューの右側にあることが問題だと考えた。そこで、カロリー表示の位置を変えて、お客さんが低カロリーの料理を選ぶようになるかどうかを調べた。

つまり、たいていの場合は「チーズバーガー 300kcal 500円」といった具合に、商品名の右側にカロリーが表示されているものを「300kcal チーズバーガー 500円」と、商品名の左側に表示するように変えてみるという実験である。

実験の参加者は「カロリーを右に表示した場合」「カロリーを左に表示した場合」「カロリーの表示なし」の3つのグループに分けられ、それぞれのメニューを見ながら料理を選んだ。その結果、「カロリーを左に表示した場合」では、選ばれる料理のカロリーが24.4%低くなった。

さらに、「カロリーを右に表示した場合」と「カロリーの表示なし」の条件では、有意差がなかった。つまり、カロリーを右側に表示していても、カロリーを表示していないのと大差がないということが分かったのだ。

意思決定には「一番目に入ってくる情報」が重要

なぜカロリー表示の位置を変えるだけで、お客さんが選ぶ料理が変わるのだろうか。その答えは、意思決定のメカニズムにある。

これまでの研究で、商品にまつわる複数の情報が示された時には、一番目に示された情報が商品を選ぶ基準になる割合が高くなることが分かっている。

例えば、車について「見た目、性能、価格」の3つの情報があるとする。車を購入する時、見た目の情報を一番目に知った場合は、見た目の良し悪しが判断基準になりやすく、価格の情報を一番目に知った場合は、価格が判断基準になりやすい、という意味である。

上記で述べた実験は、英語話者を対象に行われたものである。英語は左から右の順で文を読む言語だ。このため、メニューの左側にカロリー表示がある場合(たとえば「300kcal チーズバーガー 500円」)、頭の中に入って来る順序は、カロリー→商品名→値段の順となり、カロリーが一番目の情報になるのだ。カロリーの情報が一番目にインプットされることで、カロリーの高い低いが商品選択の大きな判断基準になりやすいのである。

このことを証明するために、同じ研究者らは、文を右から左に読むヘブライ語の話者を対象にして同じ実験を行なった。その結果、英語話者で行なった実験とは対照的に、「カロリーを右に表示した場合」に、選ばれる料理のカロリーが有意に低下し、「カロリーを左に表示した場合」と「カロリーの表示なし」では有意差がないという結果になった。やはり、カロリー情報が一番目に入って来ることが重要であるようだ。


このように、同じ情報が書いてあるとしても、情報の示し方や順番によっては、受け手の中で狙い通りの情報処理がされない場合もある。人々の行動を変えたい時には、情報を与える順序に留意する必要があるだろう。

執筆:大嶋絵理奈

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元論文:Don’t Count Calorie Labeling Out: Calorie Counts on the Left Side of Menu Items Lead to Lower Calorie Food Choices